第三者Jの小説、始めました

自身の妄想を小説にしてみた

 カリスーラ暦754320

 

 

 エスタの冒険者ギルドはサントリア山脈に近い街の西地区に位置している。

 ギルドの建物は街の規模の割にはなかなか立派で大きな建物だ。

 何故かと問われれば、ここエスタは魔物が多いサントリア山脈には徒歩で3時間の所に、カンテラのダンジョンが1日と半日の所に位置していること。そして商人や旅人などがサントリア山脈を無事に越えるために護衛を頼む最後の場所であることというのが主な理由だ

 サントリア山脈から帰って来た僕たちは魔物の剥ぎ取った部位を買い取って貰うのと冒険者登録を済ませる為、冒険者ギルドに立ち寄った。

 

 「ここが冒険者ギルドかぁ~。結構大きいんだね。」

 「エスタは冒険者にとって儲けになる仕事が多いからな。たくさんの冒険者がやってくる。結果、人数に合わせてギルドも大きくなったんだ。それにサントリア山脈の麓や低い位置は魔物も強くないから、新人冒険者がここにやってきて経験を積んでいくんだ。」

 「なるほどね。」

 

 ギルドの建物の大きさに少し圧倒されながら中に入る。

 

 「中は結構賑やかだね。食事処もあるし、それに宿もあるんだね。」

 「この規模のギルドならどの場所も似たような雰囲気だ。ただ宿があるのは大きなギルドだけだ。」

 「ふーん。あ、掲示板に依頼がいっぱいあるよ!あれから取って依頼すんだね!」

 「違うぞ。あれは常設依頼の掲示板だ。あそこに貼ってある依頼は受付を通さなくても依頼を達成した証拠を持っていけばお金がもらえる簡単な依頼しか貼っていない。」

 「え、そうなんだ。じゃあ受付にいって自分の達成できそうなものを見繕ってもらうの?」

 「そうだ。今までの依頼の達成具合や、ギルドのランクなどを考慮して受付が出した依頼の中から選ぶのが普通だ。」

 「普通はってことは例外もあるんだね。」

 「ああ。ランクが上がればギルドからの信用が上がってギルドの方が良い依頼を融通してくれるようになるし、指名依頼を受ける事もある。」

 「へー、結構やる気が出そうなシステムなんだね。」

 

  話をしながら中を進み、受付に着く。

 

 「いらっしゃいませ、本日はどのような用事でこちらにお越しになられたのでしょうか?」

 「息子の冒険者登録と素材の買取だ。」

 「承知いたしました。では登録の方はここでお待ちください。買取の方は買い取り用のカウンターへどうぞ。」

 「ミカ、俺は買取の方へ行くからその間に登録を済ませておくんだ。」

 

 そう言うと父はささっと買い取りカウンターへいってしまった。

 

 「ではこちらの用紙に名前、年齢、所属している国、住んでいる場所、戦闘スタイル、パーティを組む場合はそのパーティ名、パーティ戦闘時に望む役割、そして最後に受ける依頼の範囲をお書きください。これらは変更したくなった場合に受付で変更可能なので現時点の情報で構いません。」

 

 受付の人に言われて用紙を受け取り、書き込みを始める。

 

 (えーと、名前はミカエル=ファルベン、年齢は13、国はフィナンツ王国、住んでる町はシャルナンっと。戦闘スタイルかぁ。ソロで良いのかな?父さんとパーティを組んでるわけじゃないし、ソロでオールマイティって書いとくか。)

 

 「じゃこれでお願いします。」

 

 受付に用紙を渡し、確認してもらう。

 

 「こちらにはソロと書かれていますが先ほどの方とはパーティを組まれていないのですか?」

 「父とは僕が修行させてもらってるだけなので。これからたまに組むことになると思いますが、基本1人です。」

 「そうなのですね、分かりました。ではこちらで登録させてもらいますね。しばらくお待ちください。」

 

 そういって受付の人は奥に引っ込んだ。

 

 (しばらくかかるって言ってたし、常設依頼の掲示板でも見ているか。)

 

 そう思い掲示板に向かい依頼を眺める。

 

 (ゴブリン討伐、各種スライム討伐、簡単に見つけられる薬草数種の採集依頼、町の掃除、外壁の補強、レストランの皿洗い、等々。なるほど本当に簡単な依頼しかないな。)

 

 眺めながら色んな事を考えていると受付の人に呼ばれた。

 

 「ミカエル=ファルベンさん、お待たせしました。」

 

 名前が呼ばれたので再び受付に向かう。

 

 「ミカエルさんの登録が完了しました。ではこちらが最初に渡す10級のプレートです。」

 「ありがとうございます。」

 「それではランクについて説明いたします。冒険者のランクは全部で11級存在し、109級が新人冒険者87級が下級冒険者654級が中級冒険者321級が上級冒険者、最後にこちらが実力を計れない冒険者を特級冒険者として扱います。

 そして上の級に昇級するには自分と同じ級の依頼なら20回、1つ上の依頼なら10回の達成が条件になります。なので1つ上の依頼を5回、同じ級の依頼を10回といった形で達成されても構いません。

 ただし6級、31級は規定の依頼達成に加え、ギルドで本当にその実力があるのかを確認するために試験を行います。

 一応、特級についても説明させていただきます。特級になるためには特例の場合を除きまず1級になっている必要があります。そのうえで特定の分野において歴史的な偉業の達成といったことが条件となっており、現在ではなられている方はおりません。ここまでで何か質問はありますか?」

 「依頼に失敗した時は何かしらのペナルティがあるのですか?」

 「はい、依頼の失敗時には依頼自体に問題があった時や、天災、天災に匹敵するような生物との遭遇など特別な場合を除き、依頼者に対しての罰金が発生します。

 また依頼の失敗が4回続いた場合やそのランクにおいて合計8回失敗した場合にはランクを1つ下げることになります。」

 「そうなんですね。ありがとうございました。話の続きをお願いします。」

 「はい、続いてですがギルドカードについてです。こちらがミカエルさんのギルドカードになります。」

 

 (カードって言うけどこれもプレートみたいに金属でできているな)

 

 「プレートがあるのにギルドカードも必要なんですか?」

 「はい、プレートはあくまでその方のランクを簡易に当事者以外の方、つまり周囲に示すものであって、身分を証明するものではありません。一方ギルドカードはその人物の身分をギルドが保証するもので、仕事の時や自分の出身国以外の国において身分を提示する必要がある時に必要になります。非常に大切なものになりますので紛失しないように気を付けてください。」

 「ギルドカードについても質問してもいいですか?」

 「もちろん構いません。」

 「このギルドカードは身分証明になると言いましたが、誰かに盗まれて利用されるという事もあると思うんですがそのあたりは大丈夫なんですか?」

 「その疑問はもっともですが、心配ございません。こちらのカードにはまず偽造防止用にギルドの紋章が彫り込まれています。このギルドカードに魔力を流すと紋章が光るのでこれで本物か偽物かが判別できると言うわけです。それと個人の判別方法ですが、ギルドカードに所有者の血を記憶させることによって所有者の情報については所有者の魔力にしか反応しないようにさせます。そうすることによって所有者が魔力を流すと紋章と同じように所有者の情報が光るようになっています。試しに今魔力を流してみてください。」

 

 言われた通りに魔力を流して確認する。

 

 (確かに表面の紋章は光るが裏面の僕の情報の方はそののままだな。) 

 

 「なるほど、このカードにはまだ血が記憶されていない状態というわけですね。確かにこれなら偽造したり、個人を偽って使うことは不可能そうですね。」

 「はい、信用していただけたようですね。ただしこの血が記憶されている期間は約3年だけになります。そのため3年の間に必ず血の更新を行ってください。更新されてないギルドカードは効力を失うのでまた新たにカードを作ることになります。」

 「3年の間に血の更新ですね。覚えておきます。」

 「また情報を変更したい場合はカードが所有者のものであることが証明できれば無料で情報変更の更新ができますので気軽にお申し付けください。

 「え、無料で変更できるんですか?」

 「はい、パーティーの情報を変更する方が多いのでお金は取っておりません。」

 「そうなんですね。ありがたいです。」

 「はい。ではカードに血を数滴垂らして頂けますか?」

 

 職員から小さなナイフを受け取って、指に押し当てる。

 言われた通りにカードに血を垂らし受付に渡す。

 

 「はい、では血の登録を済ませますので少しお待ちください。」

 

 そう言い残して、ギルドの奥に引っ込む。

 5分くらいしてから、受付に戻ってきて、

 

 「お待たせしました。こちらに魔力を流しご確認ください。」

 

 僕は再び渡されたギルドカードに魔力を通し文字が光るのを確認した。

 

 「無事記憶されたようですね。それでは次に依頼について説明したいのですが、カードについての質問は以上でよろしいでしょうか?」

 「大丈夫です。」

 

 カードを自分のポケットに入れながら返事をする。

 

 「では依頼についてですが、受けることができる依頼は常設依頼を除いて自分より1つ下のランクから1つ上のランクの依頼のみとなります。これはランクが低い冒険者が受けれる依頼を無くさないための制度となりますのでご理解ください。またランクの低い依頼を達成したとしてもギルドランクを上げるために必要な依頼達成回数には含まれせんのでこちらにもご注意ください。

 そして1人が受領できる依頼は最大で同時に5つまで受けることができます。もっともこれは受付職員が5つ同時に依頼が達成可能であると判断したらという条件が付きます。普通は多くて3つまでとなります。」

 「了解しました。」

 「それではパーティについての]

 「いえ、パーティについての説明は組んだ時にお願いします。」 

 

 僕はパーティーについての説明を止めてもらう。

 

 「承知しました。では基本的な事項については以上になります。何か疑問に思ったことがありましたらう受付にお越しください。」

 

 受付の職員はそう言うと、ギルドの奥に戻った。

 ギルドについての説明が終って2、3分すると父も買い取りカウンターから戻ってきた。

 

 「登録は終わったようだな、ミカ。」

 「うん、父さんも丁度終わったみたいだね。魔物は一体いくらで売れたの?」

 「ゴブリンやスライムはいつも通りだったがフェレライ・ベアに関しては結構な高値で買い取ってもらえた。なんと15万ホロカだ。特に毛皮に傷が少なかったのが良かったらしい。」

 「ほんとに⁉︎そんなに高く買ってもらえたなんて今回はラッキーだったね。」

 「ああ、思ったより稼げたし今日の夜は母さんたちに内緒で宿でパーっと豪華なもんでも食うか!」

 「やった!女将さんの料理で豪華な食事かぁ。今からもうお腹がすいてきたよ。」

 「はっはっは、それじゃ早く宿に帰るか!」

 

 僕たちは宿に戻って豪華な食事を取り、一晩宿で過ごしてから僕たちの住む町、シャルナンへの帰途に着いた。

 

 カリスーラ歴754320

 

 

 1時間ほど昼休みを挟んで、再び目的の魔物の探索を開始する。

 探索している途中に何回かゴブリンやグリューン・スライムを見つけては準備運動とばかりに交代で討伐していく。

 探索を再開してから約3時間、ようやく目的の魔物の痕跡を発見した。

 

 「ミカ、この辺りからそろそろ目的の魔物、フェレライ・ベアの縄張りだ。この木に刻まれているマークを覚えておくんだ。実力のない奴がこいつの縄張りに入ったら最後、骨までしゃぶられると思え。こいつは縄張り意識が強いうえに鼻がいい。逃げてもどこまでも追ってくる。」

 「それならこんなに近くにいたら僕たちも危ないんじゃないの?」

 「確かに知らないで近づくとすぐに気づかれて準備できていない状態での戦闘になる可能性が高い。だが今回は俺が風上から探索をしていたからまだ気づかれていないはずだ。ミカ、戦闘準備をして俺の指示に従って動くんだ。いいな?」

  

 僕はゴブリンなどとの戦闘で感じた緊張とは比べものにならない緊張を感じながら返事をする。

 

 「了解。もう一度身体強化をかけておくよ。武器はどっちを準備しておけばいい?」

 「弓と魔法だけだ。それと魔法で使っていいのは風と水だ。初めてで近接戦闘は危険すぎる。その代わりに俺の立ち回りをよく観察して次の機会に活かすんだ。」

 「使うタイミングはどう決めればいい?」

 「俺が相手から距離を取った時だ。適度に注意を引きつけてくれ。あとできるだけ死角に動いて相手を翻弄しろ。そうすれば相手もイラついてくる。」

 「分かった。」

 

 僕たちは戦闘の打ち合わせをしながら奥へと足を踏み入れる。

 注意しながら5分ほど進む200m先に巨体がのそのそ動いているのが見えた。

 

 「父さん、僕たちから見て10時の方角にいたよ。距離は200m。」

 「俺も確認した。まだこちらには気づいていないようだがあまり近づき過ぎると気づかれるな。とりあえず残り100mまで近づく。音は立てるな。」

 

 足音を消しながらゆっくり近づく。

 

 「よし、ここで別れる。ミカは狙いやすい木の上でいつでも矢を射れる準備をして俺の合図を待て。」

 

 父は僕にそう言い残すと僕と反対方向に回り込む。僕の矢に気を取られているうちに先制攻撃を決めるつもりのようだ。僕も最適な木に登る。

 

 (よし、そのつもりなら魔物の動きを阻害する魔法の方がいいな。)

 

 「(付与魔法・風)エレクトリック・フェアライエン」

 

 (ウィンド・フェアライエンも付与したいけど2つ付与するのはまだ難しいか。)

 

 僕は準備を終え、矢を番えながら父の合図が出るのを待つ。

 父もフェレライ・ベアから約70mのとこまで近づいてタイミングを伺っているようだ。

 フェレライ・ベアも何か異変には気づいたようだ。少しあたりを警戒し始めた。

 僕と父は息を潜めながらフェレライ・ベアが警戒を解くのを待ち続ける。

 いったい何分ほど待ったのだろうか。10分か30分か集中しすぎて時間感覚がなくなる。

 集中力が切れそうになるその時フェレライ・ベアが警戒をといた。と同時にそれを見逃さなかった父が僕に合図を送る。

 僕は父が手を振り下ろしたのを確認して矢を放つ。

 矢は目標のフェレライ・ベアの大きな背中に命中し、矢に付加された電撃によって動きを止める。

 父も僕に合図を出したのと同時に走り出していたようだ。矢が刺さった直後に剣撃を加える。熊の右目と鼻をやったようだ。

 僕もいくつか枝を経由しながら地面に降り、父のサポートに向かう。

 数秒して合流を果たす。

 

 「ミカ、行動阻害の魔法はいい選択だ。よくやった!おかげであいつの自慢の鼻を潰せた。そのままサポートを頼む。」

 「分かった、怪我しないでよ!」

 

 そう一言言葉を交し、戦闘に集中し直す。

 フェレライ・ベアも体の痺れが取れたため、僕たちに反撃してくる。

 長い手と爪を使った強力な攻撃だ。特に爪は食らったら大怪我は間違いない。

 父もそれが分かっているためすぐさま間合いを詰めて相手の有利を潰しにかかる。

 僕も距離を取りつつ父とフェレライ・ベアの立ち位置を確認し死角を取るため動き出す。

 フェレライ・ベアは図体が大きい割には素早く、中々死角を取り続けるのに手こずっていたが、そんな中父が右足に剣を一閃し相手の動きを止め、間合いから離脱する。

 

 「ミカ!」

 

 隙を作ってもらった僕は父の呼び掛けと同時に魔法を発動する。

 

 (先に父さんがさっき作った傷にもう一撃食らわす!)

 

 「(風魔法)ウィンド・シュヴェーアト!」

 

 風の刃を傷跡に叩き込み、さらにもう一つ

 

 「(風魔法)ブリッツ・ジャベリン!」

 

 雷の投槍も命中させる。矢に付与した時よりも攻撃力が上がり、体が痺れる時間も少し長くなる魔法だ。

 

 「全く、よく俺のこと考えてくれているなミカ!ありがとよ!」

 

 僕の魔法で再び動きを止めたフェレライ・ベアに止めを刺すべく父は剣に(付与魔法・風)ウィンド・フェアライエンを付与し、フェレライ・ベアに接近する。

 

 「ミカにとって今回の狩りは大いに役に立ってくれたよ。ありがとな。」

 

 父はそういってフェレライ・ベアの首を斬り落とし、戦闘が終わった。

 

 「はぁ~、やっと終わったー。」

 

僕はそう言いながら地面にへたり込んだ。

 

 「ミカ、本当によくやった。結構な大物だったのによく最後まで集中して戦えたな。普通なら近くにいるとこいつの攻撃の威力にビビって動けなくなる奴の方が多いんだぞ?」

 「僕もこいつに接近してからは緊張しっぱなしだったよ。思ったより腕のリーチが長くて中々死角に移動できなかったしね。」

 「そんなのは出来ていたうちに入るもんだ。新人冒険者やランクの低い冒険者なんかはミカの半分も動けはしないだろう。」

 

 父に改めて褒めれて嬉しい気持ちになる。父に何か認めらるのは本当の一人前の薬師に近づいている証しだからだ。

 

 「それじゃ、少し休憩したら解体作業に移るぞ。」

 

 

*******

 

 

 「よし、今から解体作業に入る。このフェレライ・ベアで薬の材料になるのは胆と血液の2つだ。それと薬にはならないが高く売れるのが毛皮、爪、それに手の3つだ。肉も価値は高いが2人で持って帰るには量が多すぎる。今回は材料と高く売れる3つを持って帰る。解体ナイフを出せ。」

 「出したよ。どこから切ればいいの?」

 「まず毛皮からだ。胴体のだけでいい。その次に手首を斬り落とし、次にそこから流れる血液を瓶に詰めるんだ。最後に胆を取り出して終わりだ。」

 「分かった、やってみる。」

 

 解体作業は意外に力と体力が必要で時間がかかった。これからかなり練習する必要がありそうだ。

 

 「まあ、最初はこんなもんだろう。綺麗に解体できるとギルドに持って行った時高く買ってもらえることが多い。頑張って上手くなれ。」

 

 解体が終わったので忘れずに後処理をする。

 

 「今回の魔物狩りはこれで終わりだ。ギルドによってから宿に帰るぞ。」

 「なんでギルドによるの?」

 「換金とミカの冒険者登録を済ませるためだ。」

 「僕の冒険者登録もするの⁈やった!」

 「登録しておいた方が何かと便利だしな。もっと大きな街に行った時は薬師ギルドにも登録するからな。」

 「はーい!」

 

 僕たちは荷物を持って魔物に見つからないようにしながらエスタの街への帰途に着いた。

 カリスーラ歴754320

 

 

 「おい、そろそろ起きろミカ。」

 

 父が体を揺すりながら僕を起こす。

 空はまだ夜が明けたぐらいで明るくはない。

 

 「んーんんん、まだ夜明けだよ父さん。」

 「何を言っている。山に移動する時間を考えたらもうギリギリだ。早く準備しろ。」

 

 そう言われた僕は眠い体に喝を入れ体を起こす。

 

 「起きたか。顔を洗ったら持ってきた装備に着替えるんだ。6時にはこの宿から出発するぞ。」

 「了解。」

 

 僕は顔を洗い、持ってきた装備に着替える。

 僕の装備は魔物の革の鎧だ。鉄や他の鉱石の使われた鎧と比べて防御力は劣るが魔物の特性に応じて防火性や防水性などの追加効果が期待できる。またドラゴンなど高位の魔物の素材になると普通の鎧よりも軽くてなおかつ硬い鎧に仕上げられるらしい。

 僕はまだ成長途中なので軽い革の鎧だが、父はそれに加えてミスリルと鉄の混ぜられた胸当てなどをしている。

 

 「よし鎧はつけたな。出発前にもう一度武器の確認をするぞ。刃こぼれやヒビが入っていたらすぐに言え。」

 

 言われた通り武器の確認を行う。

 (剣は大丈夫だな。)

 (弓もよし弦はへたってないな。矢も問題ない。)

 (そして解体用のナイフはうん問題なし。)

 

 「父さん武器の確認は終わったよ。」

 「よし、それじゃ出発するぞ。」

 

 僕たちは装備と荷物を持ち宿を出発した。

 

 

*******

 

 

 宿を出発してから大体2時間くらいたった頃、ようやく目的の場所に到着した。

 

 「よしそろそろ魔物の探索を始めるが、その前に復習だ。まず魔物を狩るときに気をつける事を3つ言ってみるんだ。」

 「まず1つ目は常に退却できるような位置どりを心がける事。二つ目は敵の体をなるべく保ったまま殺す事。そして三つ目は魔物を倒した後は必ず処理をする事。」

 「そうだな。では何故かは言えるか?」

 「一つ目の理由は予期しない強敵に遭遇したときに自分の命を守るため。二つ目はこれは僕たち薬師にとって重要な事で、素材を確実に回収するため。三つ目は魔物がアンデット化しないようにするため、だよね。」

 「オーケーだ。特に三つ目は絶対に忘れてはいけない。一般人に被害が出る可能性があるから気をつけろ。それじゃあ魔物のあと処理の仕方は?」

 「火で灰にするか、聖水を魔物にかける、この二つの方法だね。」

 「問題ないようだな。では魔物の探索を始めるぞ。感覚強化と身体強化の魔法をかけろ。」

 

 父に言われて魔法を唱える。

 

 「(生命魔法)センス・フェアシュテルケン」

 

 よしこれ大丈夫そうだな。それともうひとつ

 

 「(生命魔法)フィジカル・シュテルケン」

 「掛け終わったか、じゃあ俺について来い。担当は右が俺、左がミカだ。」

 

 そう言い終わると父はすぐに移動を始めた。

 

 

******

 

 

 探索を開始してから大体30分位するとよく見る魔物のゴブリン100m先で発見した。

 

 「父さん、ゴブリン4匹見つけたけどどうする?」

 「ゴブリンか、目的の魔物ではないが倒しておくか。ミカはまだ戦闘をしたことがないしな。戦闘に慣れるためにも丁度良い数と強さだ。よし1人で倒してみろ、フォローはしてやる。」

 

 初戦闘か。ゴブリンとは言え4匹いる。油断すれば軽い火傷じゃすまない相手だ。

 一息吐いて体の緊張を和らげる。

 (まずは状況の確認だ。数は4、そろぞれ棍棒を持っているが遠距離武器はなし。魔法を使える個体もいない。)

 頭の中でこれらの情報を整理し最適に魔物を倒すイメージする。

 

 「父さん、いくね。」

 

 父さんに行動開始を伝えてから背中にあった弓矢に手をかける。

 弓の準備をしながらより確実を期すため、さらに50m近く。

 

 「ここまで近づけば一つの矢で2匹貫けるな。」

 

 矢を放ってから直ぐに近接戦闘に移行できる位置を確保する。身体強化している今ならゴブリンの元まで4秒ほどでたどり着くだろう。

 深呼吸をしてから矢の威力を上げるため魔法を付与する

 

「(付与魔法・風)ウィンド・フェアライエン」

 

 まだゴブリン達はこちらに気づいていない。

 息を潜めながらゴブリンが重なるタイミングを伺う。

 30秒ほど待ったその時、ゴブリンの頭が重なった。

 瞬間、僕は矢を放ちすぐさまゴブリンの元に駆ける。

 ビュッと音を立てながら矢は空気の抵抗を物ともせず、まるでゴブリンの頭に吸い込まれていくように命中する。

 魔法で強化された矢はその威力を保ったまま後ろにいるゴブリンの頭も容赦なく貫いた。

 

(よし、2匹やった!) 

 

 僕は頭の中で2匹倒したことを確認しつつ、残っている2匹を掃討するために走りながら剣を引き抜く。

 

 (残りのゴブリンもいきなり2匹やられて混乱している。この隙に近い方のゴブリからたたく!)

 

 草むらから飛び出し、近い方のゴブリンに剣を切りつけ、左腕を切り落とす。

 

 (くそっ、頭を潰すつもりだったのにとっさに避けられた。)

 

 剣を正眼に構え直し、ゴブリンの次の行動を伺う。

 

 (21だけど1匹は片腕を失ってる。連携されると面倒臭くなりそうだな。片腕の方から先に倒す!)

 

 ゴブリンに牽制のための魔法を放つ。

 

 「(水魔法)ウォーター・ボール」

 

 バウケットボール大の水塊が攻撃を受けていないゴブリンに向かって放たれ、胴に直撃し、吹っ飛ばされる。

 

 (よし、今がチャンス!)

 

 片腕のゴブリンに向かって突っ込む。

 ゴブリンもまた反撃のため棍棒を振り上げ迎撃の体勢を整える。

 お互いが間合いに入る。

 

(ここで左にボディフェイントを入れる!)

 

 左にフェイントを入れると、ゴブリンはフェイントにつられて棍棒を左に振り下ろした。

 僕は棍棒を振り下ろし無防備になった首に狙いをつけ剣を薙いだ。

 

 (これで残り1匹!)

 

 ゴブリンの頭が地面に転がったのを横目で確認しながらウォーター・ボールで吹き飛ばしたゴブリンの方向に顔を受ける。

 しかし顔を向けると直ぐ近くまでゴブリンが迫り、棍棒を今にも振り下ろしそうな状況だった。

 

 「うわっ‼︎

 

 とっさに剣を顔の上にあげ、剣の腹で棍棒のを受け止める。

 

 「ウォーター・ボールで吹き飛ばしたのに、なんでこんなに早く攻撃できたんだ⁈」

 

 僕は1人悪態をつきながらゴブリンの攻撃をなんとか凌ぎ、反撃のタイミングを待つ。

 ゴブリンはだんだんと仕留められないことに苛立ち、どんどんと攻撃が大振りになってくる。

 そしてついに大ぶりで棍棒を頭に振り下ろしてきた。

 僕は攻撃をもう一度剣の腹で受け止めると、がら空きの下半身に蹴りを入れ、相手の体勢を崩す。

 

 「これで終わりだっ!」

 

 そう言いながら剣を心臓に突き刺した。

 

 「はぁはぁ、これで全部倒したぞ。」

 

 周りに危険がないのを確認して地面に腰を下ろす。

 すると近くの草むらから父が出てきた。

 

 「お疲れ、ミカ。初戦闘の割にはよく体が動かせていたぞ。よくやったな!」

 「はぁはぁ、ありがとう父さん。けど思ったより緊張して、それに剣で肉を切る感覚とか血の匂いがまだ慣れなくて

 「最初は誰でもそういうものだ。数をこなしていくとだんだん慣れてくる。」

 「そんなものかな?」

 「そんなものさ。さて本来ならこれから解体作業があるが、ゴブリンにはコレといって薬の材料になるものはないから討伐部位だけ切り取れば問題ない。」

 「討伐部位?」

 「討伐部位を冒険者ギルドに持っていくとお金をもらえるんだ。もちろん冒険者登録をしている必要はあるし、依頼を通していない分買取金額は落ちるがな。もちろんお金が欲しくないならとらなくてもいい。まっ、持っていけばお金が貰えるのに持っていかない奴なんてほとんどいないがな、はっはっはっ!」

 

 話しながら父は討伐部位の耳を袋に入れる作業をこなし、取り終わってからゴブリンの死体に火魔法を放って死体を処理した。

 

 「ミカも初めての戦闘でいつも以上に疲れただろ?ここで一旦昼休みにしよう。」

 「そうしてくれると助かるよ、今は少し動けそうにないから。」

 

 僕たちは僕の初めての戦闘の良かった点と反省点を話し合いながら、昨日の夜宿の女将から貰った弁当を食べ、昼休みを過ごした。

 カリスーラ歴754319日 夕方

 

 

 ようやくエスタの街に着いた僕たちは宿を探しに街に中心部に向かった。

 中心部には冒険者や行商人、旅の吟遊詩人などが止まるための宿が多く並んでいる。

 そのうちの一つである銀とんぼと呼ばれる宿に入っていく。

 

 「いらっしゃい、あらシモンじゃないか、今日も1人かい?」

 

 そう声をかけてきたのはこの宿の女将だろうか。

 

 「やあ、今回から息子もいるから2人だ。それとここで夕食を食べたいので夕食の準備を頼む。」

 

 いつものような感じで父は宿に宿泊する旨を伝える。

 

 「そうなのかい。あんたが息子かい?」

 

 いきなり声をかけられた僕は少ししどろもどろになりながらもなんとか返事を返す。

 

 「は、初めまして、ミカエルと言います。歳は13です。」

 「なんとまあ、13歳とは随分と若いじゃないか。シモン、なんでこの子を連れきたのさ?」

 「歳は13だが、ミカはもう薬師に必要な基本は完璧にできる。そろそろ応用の薬の作り方を教えるついでに自分で魔物を狩れるようにするために連れてきたのさ。」

 「はぁー、その歳でもうそこまでできるようになっているのかい。やっぱりあんたの子だねぇ。」

 「いや、俺なんかよりもずっと物覚えがいいし、ハンターとしての勘もある。今はまだひよっこに毛が生えた程度だがあと数年したら追いつかれるな。」

 「あんたがそこまで言うんだ、親バカっていうのではなさそうだね。あんたの息子が後を継いでくれれば私らも安心だね。」

 

 

「あ、ありがとうございます。」

 

 少し気恥ずかしく感じながら返事をする。

 

 「さて、今日ここに来たってことは明日の魔物狩りのためだろ。部屋は216だ。荷物を置いて食堂に来な。精のつくものを出すからしっかり食べるんだよ。」

 

 そう言われて女将さんから鍵を受け取り、部屋へ向かった。

 部屋は清潔に保たれており2人部屋にしては大きめだ。

 僕たちは荷物を置き一息つく。

 すると父が

 

 「ミカ食堂に行く前に言っておくことがある。宿についてだ。今回が初めてだから言っておく。将来魔物狩りに行く機会も多くなることだろうからな。宿に泊まる時は必ず平均よりも価格が高い信頼できるところに泊まるんだ。何故だかわかるか?」

 

 僕は少し考えて答える。

 

 「えっと、安い宿だったら自分の荷物が取られる危険があるから?」

 「もちろんそれもあるが、一番大事なのはそこじゃない。体を休め、整えるためだ。魔物狩りには常に危険がつきまとうと馬車の中でも言ったな。もし魔物狩りの最中に体調が万全でなっかたらどうなる?万全であったならば気付けた危険や、魔物の不意の攻撃などによる怪我を負うことになる。分かるな?」

 「うん。」

 「それだけじゃない。食事にも注意するんだ。屋台で買ってもいいがあまり安いものや信頼できそうにないものを口にするのは駄目だ。宿の場合も同様だ」

 「分かった、気をつけるよ。」

 「最初はそんなに心配していない。ただ慣れてきたときにこういう事をきっちり守っていないと必ず手痛いしっぺ返しをくらうことになる。しっかり覚えておくんだ。」

 

 父は話を終えるといつもの表情に変え

 

 「さ、真面目な話はこれで終わりだ。食事にしよう。女将のアーニャの飯は母さんのと同じくらい絶品だぞ!」

 「本当⁉︎それは楽しみだね!」

 

 僕たちは話をしながら食堂へと向かった。

 父さんの言う通り食事はとっても美味しかった。

 食事を終え、僕たちは部屋に戻り、明日の魔物狩りに備えてしっかりと睡眠をとった。

 カリスーラ歴754319

 

 

 さて今日は待ちに待った魔物狩りの日だ。

 今日のためにこの約一週間しっかり準備してきたつもりだ。

 

「ミカ、準備できたか?そろそろ行くぞ」

「分かったよ、父さん。それじゃ行ってくるね母さん、セリア。」

「お父さんがいるから大丈夫だとは思うけど気をつけなさい。体は一つしかないのだから。」

「兄さん、初めての魔物狩りです。頑張って下さい。父さんは兄をしっかり注意して見守って下さいね。」

 

 

 家の前で少しやり取りをしてから僕たちは出発した。

 町の中心部に向かい、目的地であるサントリア山脈の麓にあるエスタという街に向かうた為、乗合馬車に乗込んだ。

 エスタまで馬車で約一日はかかる。

 馬車に乗りながらふと思った事を聞いてみる。

 

「そういえば今回はサントリア山脈の魔物を狩りに行くけど、近くのカンテラのダンジョンじゃダメなの?」

「ああ。ダンジョンの魔物は殺すとなぜか結晶を落とすだけだからな。俺たち薬師にはあまり向かないのさ。ただしダンジョンにだけ生えたり群生している薬草も存在するから必要な時には行かなければならいな。」

「ふーん、そうなのか。あ、それとダンジョンではたまに珍しい薬や薬草も宝箱から出てきたりするらしいね。」

「それもあまりあてにはできないな。そもそも宝箱はあまり見つからないし、あったとしてもその中身が薬や薬草である確率はさらに低い。まあでも大きなダンジョンの深いところまで潜れば今ではもう存在しない薬草や薬、もしかしたら伝説のメディカが発見できるかもな!」

「伝説のメディカも見つかるかもしれないのか。一度は潜ってみたいなぁ。」

「やめとけやめとけ。ダンジョンの深いところは本当に一握りに強者にしか攻略できないところだ。よっぽどの事情がない限り強者以外は近寄りすらしないもんだ。」

「そっかけどなー、メディカが見つかるのかもしれないんだよね。薬師だったら絶対一度はみてみたい伝説の薬だよ。」

「伝説の薬メディカか、確かに俺も一度は見てみたいが今まで発見されたのは全世界で片手で数える程だな。しかも全部ダンジョンで発見されたものだ。製法も一応あるが材料はほとんどが伝説に伝わっているものばかりだ。本当にそれで作れるのかは今となっては誰もわからん。」

「そうだよね。僕も読んだ事あるけど材料を発見すのにも一苦労だ。まあその製法が書かれているのがガーロンド=エリック大先生の本だってのはまだ救いかな。」

「そうだな、彼が亡くなってから約1300年、今だに第一線で使われている本だし信頼性は十分だ。まぁけどそんな夢物語は一人前になってから考えるんだな。そんなことより今は目の前の魔物狩りの方が重要だ。俺と一緒とはいえ魔物狩りの時はいつも危険が付いてまわると思え。油断していると最悪の場合死だ。」

「分かってるよ父さん。油断はしないさ。」

 

 魔物狩りに事をどこか呑気に考えていたが父が真剣な表情をしていったのを見て気持ちを切り替える。

 こうして僕たちは馬車に揺られながら進み、日が暮れる頃にエスタに到着した。

 カリスーラ暦754311

 

 

 僕はミカエル=ファルベン。薬屋の息子だ。

 家族は薬屋兼ハンターの父と薬屋の母、そして3歳離れた妹のセリアの四人家族だ。

 そんな僕は薬草採集の最中で山に入っている。

 これも一人前の薬屋になるための修行の一つだ。

 

 「はあ、ようやくカンタリ草を10束採集できた。あとは...]

 

 残りの頼まれた薬草を探すためさらに山奥に入る。

 

 「お、あったあった。」

 

 見つけたサンガリア草を丁寧に引っこ抜きながらカバンに詰め込んでいく。

 これで今日のノルマは終わりだ。

 

 「はあ、もうこんな時間帯か。早く帰らないと父さんに怒られるな。」

 

 もう空は陽が傾いて暗くなっていた。

 夜の山は危険が多い。暗くなると自分がどこにいるか分からなくなることが多いし、何より魔物が活動しはじめるからだ。

 魔物はもちろん昼にも出るが、夜の魔物の方が気性が荒く平気で人間を襲ってくる。

 まあこの辺の魔物はそんなに強くないし、ある程度の武器の心得を持っていればそんなに心配はいらない。

 

 「さてと、カバン持ったし帰るか。」 

 

 

 ******

 

 

 「ただいま、今日のノルマも全部こなせたよ。」

 「おかえり、ミカ。薬草はいつもの所に置いといてくれる?」

 

 返事をしてくれたのは母のアストリアだ。

 母は30を少し過ぎた頃だがとても綺麗で町でも評判だ。調合できる薬も多く薬師としの腕も確かだ。

 

 「おお、帰って来たかミカ。もう薬草の見分けはほとんど完璧だな。」

 

 続いて返事してくれたのは父のシモンだ。

 父も歳は30を超えているが、随分と若々しく整った顔をしている。父は母と同じく優秀な薬師でありながらハンターとしての腕も確かだ。

 日常で使うような薬は薬草だけで足りるが、珍しい薬や効果の高い薬を作る際には動物や魔物、さらには鉱物といったものまで必要になることが多い。

 そのような時は冒険者ギルドに依頼して取りに行ってもらうのが普通だが、父は自分の作った薬に責任を持ちたいらしく、自分で採取するためハンターになったそうだ。

 僕も父のそういう姿勢を尊敬しており、こうして自ら近場で採取の修行もしているというわけだ。 

 

 「本も随分読み込んで勉強したし、それにこれだけ毎日色んな薬草を採集してたら嫌でものできるようになるよ。」 

 「それにしてもだ。その歳でこれだけ正確に薬草を見分けられるのは大したものだ。」

 「ありがとう、父さん。それじゃひとつお願い聞いてくれないかな?」

 「ん、なんだ?」

 「そろそろ僕も魔物狩りに連れてくれないかな?剣と弓と魔法の修行もちゃんとやってるし

 「うーん、魔物狩りはまだ早いような気もするが。確かにもう基本の完璧なミカをこのままにしておくのは少しもったいない気もする。うーん

 「あら、あなたったらまだ禁止しているの?そろそろ解禁しないと勝手に魔物狩りに行っちゃうかもしれないわよ?」

 「うむ、確かにアストリアに言う通りだな。魔物狩りは危険が多い。1人で勝手に行かれて大怪我なんてされたら困るし、次の魔物狩りから連れて行くことにするか!」

 「本当に!?ありがとう父さん、母さん!!」

 「剣と弓の整備と体調の管理を忘れるなよ。」

 

  やっと魔物狩りが許可されて有頂天になっていると母さんが微笑しながら

 

 「嬉しいのはわかるけどそろそろご飯よ。荷物を片付けに行くついでに上にいるセリアを呼んで来なさい。」

 

 しまった完全に浮かれてた。母にそう言われて2階に上がって荷物を部屋に片付ける。ついでに服も着替えてから妹のセリアを呼びに部屋に向かいドアをノックする。

 

 「おーい、セリアそろそろ晩御飯だってさ。早く下に来いよ。」

 「あ、お帰りなさい兄さん。もう帰ってきていたのですね。すぐに行きますから少し待ってください。」

 

 少ししてからドアが開き、セリアが出てきた。

 セリアも母と父の血をしっかり引き継いでおり、ものすごく綺麗な顔立ちをしている。街に出れば男なら皆振り返るであろうこと間違いなしだ。

 そんなセリアも僕と同じように将来薬師になる為に勉強を頑張っている。

    

 「お待たせしました兄さん。あら、とても嬉しそうな顔をしていますが何かいいことがあったんですか?

 

 妹は微笑みながら質問してくれた。

 

 「セリアよく分かったね、実は魔物狩りの許可がようやく出たんだ。やっと本格的な薬の調合が出来るようになるって考えたら嬉しくてね。」

 「まあそうなのですね!おめでとうございます、兄さん!それはとても喜ばしいことですね!」

 「ありがとう、もしセリアも早く基礎を終わらせれば一緒に行けるかもしれないぞ。」

 「そんな、私はまだ基礎で手一杯ですよ。兄さん同じであと3年はかかりそうです。」

 

 冗談を言ったつもりなのだが、全くセリアは真面目なやつだ。そう思いながら話を続け、夕食を食べに揃って下に向かった。